最近、芥川賞受賞作家でお笑いタレントのピース又吉さんがやってる「渦」というYouTube番組にはまっている。中でも有名人から一般の方まで、色々なジャンルの人が書いた「インスタントフィクション」という超短編創作小説を、又吉さん扮する『髑髏万博(しゃれこうべばんぱく)』先生が妄想で解釈をするというコーナーがお気に入りだ。400文字以内で形式にとらわれず、自由に書いた小説の行間を、骸骨先生は丁寧に埋めてゆく。その発想は実に自由奔放で変幻自在。一見すると平凡な物語がディテールを補完され物凄く深いドラマとして目の前に立ち上がってくる。最初はただただ感心しながら見ていたが、これはまさに普段自分が演出をするとき、役者さんとやり合ってることだな~と思いました。
私がワークショップなど主催するとたまに参加者に出すナゾナゾがあります。
「小説に有って脚本には無いもの、な~んだ?漢字二文字で答えてください」
答えは「描写」です。「心理描写」や「風景描写」など。簡単なものがト書きに書かれている事もありますが、通常は事細かな指定はありません。そこを解釈して埋めてゆくのが演出であったり役者だったりに与えられた創作の余地なのだけど、そこに隠された可能性に気付かず、初見で感じた感想のまま芝居を作り上げてしまう方が多いのは非常に残念です。
例えば、舞台は学校、クラスでもあまり目立たないタイプの女の子が、大勢の友達と歩いている途中に言う「うぅ…寒い」という台詞があるとしましょう。彼女は主役でも何でもないその他大勢のポジションで、台詞はこの一言だけです。これを任された役者は大体、身体をこわばらせ、手の平をこすり合わせ、何なら「はぁ~」と手に息を吹きかけながら台詞を言ったりします。
『寒いと言っているから寒いを表す表現をする』
もちろん、正論でしょう。大体の人がそう思い、実際同じような動きで表現をするでしょう。
でももしこの子が本当は寒いのではなく、大好きな同級生に自分がここにいる事を気付いて欲しくて、気にして欲しくて、でも主張することは出来なくて、さり気なく言った一言だったらどうでしょう。この役を演じる役者さんはどこを(誰を)見て、どんな気持ちで言うのでしょう。
ただ手をこすりながら、息を吐きかけ、うぅ…寒いと言うより、もっと多くの情報が欲しくなってきませんか?
『妄想をする』
はとても楽しい事ですね。
何かふと思ったので書き残してみました。皆さんも『インスタントフィクション』、YouTubeで見れますから興味を持たれたのでしたら是非お勧めしますよ♪
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